若者のスマートフォン・SNS利用
スマートフォン(以下、スマホ)の爆発的普及に伴い、いつでもどこでもインターネットにアクセスできるようになった。10代、20代の若者のスマホからのインターネット利用時間はここ数年間でも増加傾向にあり、特に10代ではSNS(Social Networking Service)の利用時間が長いことが報告されている(総務省,2017)。
また、若年層を対象にして内閣府(2017)が行った調査によれば、中学生のスマホ利用率が60%弱であるのに対して、高校生では95%をこえ、高校生にとってスマホは必須のコミュニケーションツールとなっている。この内閣府の調査では、高校生のインターネット利用者のうち、ほぼ9割がインターネットで「コミュニケーション」していると回答している。総務省の調査とあわせてみると、高校生がスマホを介して行うコミュニケーションの多くがSNS上で行われると考えられる。
SNSの定義は明確に定まっているわけではないが、本稿では河井(2012)に従い、「既存の社会的つながりの維持や新たな社会的つながりの構築を支えるためのオンラインサービス」と広く捉えることとする。今日の日本では、LINE、X(旧Twitter)、Instagram、Facebookなどがこれに該当する。
ここでは二つの点に注目し、SNSの特徴がネガティブ経験に通じることを論じる。一点目は、メールに比べてSNSの方が「新たなつながり」を生む可能性が高いということ、二点目はSNSには多様な「可視化」の機能が組み込まれているということである。
SNSの特徴とネガティブ経験
新たなつながりの生成については、橋渡し型社会関係資本の醸成(宮田,2005)などポジティブな側面も指摘されるが、中尾(2017)が高校生のインタビューデータから報告しているように、見ず知らずの人からのコメントや友達申請、あるいは商業的な勧誘などに不安や苛立ちを感じるなどのネガティブな影響もあると考えられる。
また、新たなつながりを生み出せなかった者にとっては、そのこと自体がネガティブ経験になりうる。これは、二点目の可視化機能とも連動している。すなわちSNSでは、誰と誰がつながっているのかといったつながりの様相、SNSでのつながり(友人数)の多寡、あるいは新規につながりが生まれているかといったことも見えてしまい、そのことが社会的比較やネガティブ感情を生じさせるのである。
このようなつながりの可視化に加えて、やりとりが一覧表示され履歴が残ることによるコミュニケーション自体の可視化、さらには「いいね!」の数に象徴されるような他者からの評価の可視化もSNSの特徴である。テキストだけでなく写真や動画を投稿、共有できることもコミュニケーションの可視化、評価の可視化を補強している。
そして、このような多様なSNSの特徴が、若者の間でいわゆる「SNS疲れ」(加藤,2013;二宮他,2016;中尾,2017)や「SNSストレス」(岡本,2017)といわれるネガティブ経験を生み出していると考えられる。このように、SNS自体の特徴や、そこに組み込まれた機能がSNS利用に伴うネガティブ経験の要因となるが、若者がもつ友人関係の特徴もまた、それらの要因になると考えられる。
SNSの特徴
- 新たなつながり
- 人間関係の可視化
- 評価の可視化
感じやすい負担
- 他者との比較
- 反応への不安
- 関係への気づかい
SNSストレス
本文で紹介している先行研究の論点を整理した概念図です。因果関係や発生頻度を示す統計グラフではありません。
さらにSNSが新たなつながりを生む装置であることから、SNS利用によるネガティブ経験には、携帯メールで体験されたような既存の友人関係におけるトラブルにとどまらず、より幅広い問題やリスクが含まれている点にも着目する必要がある。
高校生の友人関係とSNS利用
以上から中山(2018)の研究では、高校生の友人関係を岡田にならって類型化し、そのうえでSNS利用に伴うネガティブ感情やネガティブ経験との関連を検討することを目的とした。
近畿圏の公立A高等学校の1年生を対象に、授業時間内において集団で調査を実施し、452名(男子130名、女子322名)のデータを得た。
調査の結果、友人と心を打ち明けてつきあう関係においてはSNS利用がネガティブ経験につながらないこと、傷つけあうことを回避しようとする傾向が強い場合に、SNSネガティブ経験が増大することが示唆された。高校生などの若年青年層においてはSNS利用の多寡のみに着目するのではなく、友人関係のとり方や心理的適応に注意すべきであると考えられる。
研究で示唆された関連
SNS利用がネガティブ経験につながらないことが示唆された
傾向が強い場合にネガティブ経験が増えることが示唆された
SNSをどの程度利用しているかだけではなく、友人とどのような関係を築いているかにも目を向ける必要があると考えられる。
大学生の友人関係
これは高校生の結果であるが、大学生ではどうだろうか。
エリクソン(Erikson, E. H.)によれば、青年期とは自分に対するアイデンティティ感情を自分のものとし、その感情がぼやけて曖昧になることを克服する時期とされ、アイデンティティは「社会的現実」に密接な関係をもっているとされる(谷,2006)。
このような青年期の課題と密接に関連する友人関係について、これまで様々な研究がなされている。例えば種村・佐藤(2007)によれば、学校段階が上がるにつれ友人を厳選する傾向と親友観の変化とが相まって、報告される親友数は減少していき、他者からどう思われているのかが気になり、自分が自分の親友からも親友と思われているかどうかの不安が生じるために、親友がいるか確信が持てなくなる傾向が現れるとされる。
その一方で、学生において2~3人の親友がいるという者の割合が減り、4人以上の親友がいるという者の割合が増えるという指摘もある(富田,1996)。これらは友人関係の「深さ」や「広さ」に着目した研究であるが、青年期の友人関係にはこれら2つの次元とは独立して、状況に応じて関係対象や自己のあり方を切り替える付き合い方の次元が存在するという指摘もある(大谷,2007)。
2009年7月、山梨県内の県立高校3校、私立短期大学1校、私立大学1校、東京都内私立大学2校の合計7校に在籍している学生を対象に「友人関係」に関する選択式・自由記述式のアンケートを配布し、調査した。
青年の友人関係について分析した結果、自他を信頼できない人は人間関係に警戒心を抱いているため、自らを防御しようとして自己表明を控え、相手の顔色をうかがいながらの浅い関係でいようとする傾向がみられた。また、自他を信頼している人は互いに理解したい、理解してもらいたいと考え、積極的に内面的内容の会話をすることがわかった。
そして、相手の求める言動をとることで友人関係を保とうとする傾向は、自分の言動に自信がなく、相手にどのように思われるのか気になるため、相手が求めない限り自分を抑え、表面的内容の会話で保とうとする姿勢との関連がみられた。
高校生では他者との信頼関係が相対的に浅く、自分が相手からどのように思われているのか気になり、相手の気分を害さないように気をつかう傾向がみられる一方、大学生では今まで築いてきた友人との信頼関係を深めていこうとする傾向が強くなるほど、内面の理解活動が増加していくことが読み取れた。
さらに、大学生では交友関係の広がりにより自己理解ができるようになり、自己に合わせた友人選択をするようになっていく傾向がみられた。
高校生と大学生の比較
これらの研究から、大学生は高校生より信頼関係が深くなり、交友関係が広がるということがわかった。「友人と心を打ち明けてつきあう関係においてはSNS利用がネガティブ経験につながらない」ということがわかっているため、信頼関係が深い、つまりより心を打ち明けられていると考えられる大学生では、さらにSNS利用によるネガティブ経験は減少すると考えられる。
また、「傷つけあうことを回避しようとする傾向が強い場合に、SNSネガティブ経験が増大することが示唆された」ともあるが、大学生では交友関係の広がりで自己理解ができるようになり、自己に合わせた友人選択をするようになるため、傷つけあう友人関係が減り、よりSNS利用によるネガティブ経験は減少すると考えられる。
そのため、高校生と大学生を比較すると、大学生のほうがSNS利用によるネガティブ経験は減少すると考えられる。しかし、今回の研究ではデータの男女の比率が偏っており、性差が特定できないなどの問題があった。これらの考察には男女差がある可能性があることも理解しておきたい。
まとめ
SNSには、新たなつながりを生むことや、人とのつながり、コミュニケーション、他者からの評価を可視化する特徴がある。これらはポジティブな側面をもつ一方で、社会的比較や不安、SNS疲れなどのネガティブ経験につながることもある。
高校生と大学生の友人関係に関する研究からは、SNSの利用時間だけではなく、友人との信頼関係や、相手を傷つけないようにする気づかい、自己理解に合わせた友人選択などにも目を向ける必要があると考えられる。